4月ですね。今年はコロナの影響で十分な新採研修もなく、職場に配属された方が多いのではないでしょうか。同期とのつながりが十分に築けず、孤軍奮闘されているのではないかと老婆心ながら、心配しています。
さて、前回に引き続き、記憶が遠くなっていく土木事務所での仕事について、書いていきたいと思います。今回は、土木事務所のお仕事の概要編です。
大阪府では、新採ルールというものがあり、最初の4年間で、出先を2年、本庁を2年経験します。
出先というのは、府税事務所や土木事務所等、大手前や咲洲庁舎以外の府の施設を言います。
そのため、多くの新採職員が府税または土木を経験することになります。
一般行政職員が少数派
土木事務所は府の組織の中でも一種独特の世界で、その理由は職員の構成にあります。一般行政職員、技術職員、技能労務職員(いわゆる現業さん)、非常勤職員で構成されるからです。技術職の方が大半を占め、次に現業さん、という感じで、一般行政職員は1割か2割に満たないくらいです。
しかも、一般行政職として配置されている人にも、現業さんから職種変更して一般行政職となったという方も多いです。
つまり、圧倒的に一般行政職が少ないのです。異動で土木にくると、このことに戸惑う人は少なくありません。
一般行政職員同士の「言わなくてもわかるだろう」や「おそらくこうだろう」「こうするものだろう」といった予測がまったく通じないからです。
現業さんについて、ご存じでない方もいらっしゃるかもしれません。説明が難しいのですが、地方公務員法第57条においては、「単純な労務に雇用される者」とされています。 ( 昔の法制定時の語感を引き継いで単純な労務とされていますが、実際には単純な労働ではないことも多いです。 )給料体系や労働基準法等の適用関係も一般行政職員や技術職員と異なります。イメージ的には、法律を取り扱うというより、現場で作業をする人、という感じでしょうか。外から見ている限りでは、現業さん同士の結束力は強く、上下関係も厳しいようです。仕事の上では、現場での経験が長く、機動的で、地域のことをよく熟知している頼れる存在です。
それゆえに、敬意をもって、仕事をお願いする必要があります。現業さんに「こいつはいい奴だな。よし、一緒に飲みに行くぞ!」と思ってもらえるか、「生意気な奴だ」と思われてしまうかで、お仕事のやりやすさが変わるように思います。まぁ、これは現業さんとの場合に限らず、他の職場でも同じことですね。
技術職員の方は、その分野のプロです。ど素人の私は、トンチンカンなことを言って、よく技術職の方をイライラさせてしまいました。決裁へのご指摘の意味がわからず、右往左往していました。若手の技術職の方に、よく助けていただきました。
土木事務所は、人間関係が肝だと思います。飲み会や楽しいイベントも多いので、ぜひ、積極的に取り組んでください。
土木事務所における一般行政職員の仕事
土木事務所における一般行政職員は、私がいたときは総務グループ(以下、「G」とする)、企画G、用地G、管理Gに配属されていました。
総務Gは人事や交通経路の認定、各種支払い等で、他での仕事とあまり大きく変わりません。男性が多い職場なので、総務に新採女性が配属されると、喜ぶ人は多いです。
企画Gは、すみません。あまりよく知りません。
用地Gは道路予定地の買収や、官民境界とよばれる都道府県などが管理する土地と住民さんの土地の間の境界を確定する事務を行います。
私は管理Gの仕事をしていたので、管理について、詳しく説明していこうと思います。ぜひ、他の仕事については、経験者の方が書いてくださるとうれしいです。
管理Gの仕事の大きなものの1つは、許認可事務です。
道路、河川、砂防、特殊車両(以下、「特車」という)、屋外広告物などがあります。(大阪府の場合、屋外広告物は、数年前にほとんど市町村に権限移譲されました)
私は特車以外を担当していました。
もう1つの大きな仕事は、道路、河川の管理です。管理とは具体的に何をするかというと、基本は苦情を聞き、対応することです。
地名・道路・河川の名前を覚えよう
土木事務所の管理Gに配属されたら、まず自分の担当する地域の地名、管理する道路、河川の名前を覚えましょう。特に地名の読み方は最初に確認しておくと仕事がスムーズです。読みにくい地名は、周りの方に聞いてみましょう。
また、道路の名称は、正式名称に加えて、地域で通っている名前や略し方があります。たとえば、国道170号線は、「外環(そとかん)」と呼ばれたりします。府民の方も当然のようにそう呼ぶので、知らないと戸惑います。私は大阪の出身ですが、車を運転しないので、独特の呼び方に初めは戸惑いました。
担当する地域の地図は、早々に入手しましょう。事務所にも事務所の管轄する地域の地図と、詳細な地図(本)はありますが、担当する地域(市)が1枚にまとまっている地図を自分で購入して持っておくと便利です。読めない地名にはふりがなを打ったり、同じ河川でも途中から管理者が変わる場合にはその場所を記録したりしていました。2年間、現場へ行くときも含めて、ボロボロになるまで使いました。
自分の担当する地域を覚えることができたら、自分の土木事務所が担当する地域を通る道路、河川についても覚えていきましょう。
苦情を受けて、場所をすぐに特定できるか否かで、こちらに対する住民の方の信頼感が変わります。わからないときは、何度も聞き返したりしなければならないため、ただでさえお怒りの場合、余計に怒らせてしまい、まとまる話もまとまらなくなってしまいます。
楽しい仕事
土木事務所に新採で配属されると、色々と楽しい仕事にも参加できます。たとえば、住民さんとのごみ拾い。(え、楽しくないですか? 意外と楽しいですよ)クリーンアップ作戦と題して、みんなで汗をかきながら、道路や河川の清掃をするのは、事務職ではなかなかない楽しい仕事です。
学生さんと共同で橋に色を塗る、という仕事もありました。また、配属によっては小学校等での出先授業のようなことをしたりもするようです。
また、道路パトロールも桜の季節は山沿いに綺麗な場所があったりと、自分の地域の素敵な場所を発見できるいい機会です。(河川パトロールは冬に延々と川沿いを歩くので、寒さに凍えます)
府の仕事の中でも、なかなか経験できないことがたくさん経験できる職場です。私の場合、仕事自体は辛いことも多かったですが、飲み会がたくさんあり、マラソンや山登りなどの楽しい行事もたくさんあって、よい先輩にも恵まれた職場でもありました。しんどい職場だけに、団結力が高まるのかもしれません。また、休みがとりやすいのも、個人的にうれしかったことです。色々な方の話を聞いていると、土木事務所のことを「楽しかった!」という方と「辛かった!」という方に分かれるようです。同じ仕事をするのです。どうせなら「楽しかった!」と言えるようになりたいですね。