固定資産税課税というお仕事vol.7 | 隣の公務員

固定資産税課税というお仕事vol.7

前々回と前回で、評価額から税額までの基本的な算出プロセスについて説明してきました。今回はその税額がゼロになったり、税額を下げたりする制度について説明したいと思います。

◆まずは概観から

くどいようですが、税額の算出プロセスは以下の3ステップでした。

  1. 評価額を求める(←単価×補正率×面積)
  2. 課税標準額を求める(←評価額に特例等を加味)
  3. 税額を求める(←課税標準額×税率)

課税標準額を下げる制度と税額を下げる制度があるので、このステップの理解が大事になってきます。というわけで、税額が下がる仕組みとしては、大まかに言うと4つの制度があります。

非課税課税してはいけない。法348条
特例主に課税標準額を減じる。
軽減税額を減じる。
減免税額を減じる。法367条→条例の定めによる

他にも、課税免除不均一課税といった制度(法6条、7条)、あるいは超マニアックなところで条例減額制度というのもあるのですが、例外的なものですので今回は省略します。

◆非課税

非課税の制度は大きく2種類に分かれます。

  • 人的非課税(法348条1項)…固定資産の所有者により非課税となるもの。具体的には、国や地方公共団体等の場合がこれに当たる。
  • 物的非課税(法348条2項)…固定資産の性格又は用途により非課税となるもの。代表的な例としては公衆用道路や墓地等がある。

なお、人的非課税と物的非課税が混ざったようなケースもあります。例えば「社会福祉法人その他政令で定める者が児童福祉法第六条の三第十項に規定する小規模保育事業の用に供する固定資産」というようなものです。

抑えておくべき点は、条文に固定資産税を「課することができない」とある以上、課税してはいけないという点があげられます。

そしてもう1点大事なことがあります。法348条2項の但書きです。「ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができる。」とあります。つまり、社会福祉法人その他政令で定める者が児童福祉法第六条の三第十項に規定する小規模保育事業の用に供する固定資産であっても、所有者Aさんがその社会福祉法人に有償でその固定資産を貸し付けている場合Aさんには課税される、ということです。なので、所有者には無償貸付けか有償貸付けかを確認する必要があり、無償貸付けだという場合はそのことを証するもの(契約書の写し等)の提出を求める等した上で、非課税扱いとする必要があります。ややこしいですね。

◆特例

前回紹介した住宅用地特例が代表例です(法349条)。特例と言えば多くの場合は課税標準額を減じることを指しますが、税額を減じることを特例という場合もあります。ちなみに、地域決定型地方税制特例措置という制度があります。通称、わがまち特例と呼ばれるもので、法律の定める範囲内で地方自治体が条例で特例割合を定めることができる仕組みですが、これは課税標準を減じるものと税額を減じるものが混在しています。

◆軽減

家屋の課税に多くみられます。代表例として新築軽減認定長期優良住宅軽減があげられます。(法附則15条の6、7)。軽減という場合は、課税標準額ではなく税額が減額となります。

◆減免

法367条をそのまま引用します。「市町村長は、天災その他特別の事情がある場合において固定資産税の減免を必要とすると認める者貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、固定資産税を減免することができる。」条例の定めによるという点が重要です。

◆「課税標準額の減額」と「税額の減額」でどう違う?

結果として課税する金額が変わりないのに、課税標準額の減額なのか税額の減額なのかを気にするのはなぜでしょうか。既にお気づきの方もおられるかもしれませんが、これは前回に紹介した免税点制度に関係してくるからです。例えば、償却資産の課税標準額が200万円だったとしましょう。課税標準額が1/2になると免税点未満(150万円未満)になるので、税額はゼロになります。一方、税額が1/2になるという場合は、200万円×税率1.4%×1/2=1.4万円となり、しっかり課税されることになります。

◆対象の捕捉が難しい

課税する側からすると「申請してもらわないと分からない」というケースが多いです。非課税の例であげた小規模保育事業の用に供する固定資産については、基本的にはその事業者から申請してもらわないと分からないと言えます。しかし、その事業者さんが非課税制度について知っているとは限りません。したがって、課税する側から福祉部門に事前に照会をかけて事業者さんに非課税申請を促すといった動きが必要だと思います。この例に限らず、公平、公正な課税を目指す上では、事前に情報を収集して然るべき手続きを行ってもらうことが大事だと考えます。

◆あともう少し

全7回をかけて、固定資産税課税の仕事について、とりわけ「正しい課税」について以下の要素に分けて説明してきました。

  • 正しい者を納税義務者とすること(vol.3)
  • 正しい金額で課税すること(vol.5-7)
  • 正しい時期に、正しい方法で納税義務者に納税の告知を行うこと(vol.4)

そしておそらく次回は最終回。これまで取り上げなかった内容について簡単に触れておこうと思います。(つづく)

この記事を書いた人:KIYO
KIYO

「キヨさん」こと京都府長岡京市の清原と申します。システムエンジニア5年と人材育成5年の後に公務員に転職。好物は美味しいものとおもしろいこと。 行動原理は「10年間のハンデを埋めたい」という思いと「タコツボ化してはいけないなぁ」という思いと…。

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