お役所で仕事をしていて、いやなことの1つ。それが……
苦・情・対・応・☆
決して、苦情対応だけはしたくないと人事の配属希望調査票に記載したら、まさかの新採で、苦情対応が主な仕事の部署に配属されましたよ(^_-)-☆
電話が鳴るだけでドキドキしたり、怒鳴られて頭が真っ白になったり。生まれてこの方、見ず知らずの人から罵声を浴びせられるなんて経験はほとんどしたことがない私は、ずいぶん苦労しました。
職場で、トイレで、通勤の道で、お風呂で、お布団の中でも、よく泣いていました。「仕事 行きたくない」「仕事 やめたい」なんて、検索していたものです。
今でも苦情電話や苦情対応には内心震えます。それでも、後輩ちゃんが苦戦していたら、「代ろうか?」と恰好をつけられるくらいには、強くなりました。
その秘訣をお話したいと思います。あくまでも個人的経験からの話ですが、誰かのお役に立てれば幸いです。(電話での苦情を想定しています)
<目次>〇真摯に話を聞く
あいづち
繰り返し
要約
質問
〇謝るところは謝る
〇自分の中で、お助けフレーズを決めておく
〇メモを残す
〇一人で抱え込まない
〇電話を切ってもいいし、反論してもいい
〇人格を否定する言葉を受け入れなくていい
〇真摯に話を聞く。
苦情主は、なぜ電話をかけてくるか。「困っていることを解決して欲しい」もちろんそうです。でも、何件も電話を受けているうちに一定数の人は、「自分はこんなにも困っている」「こんなにも困らされて辛い」という自分の話を聞いて欲しい、自分の想いをわかって欲しいんだな、と思うようになりました。
実際、困っていることを解決できなくても、満足して電話を切っていただけることがあります。それは、「解決してくれない=自分は軽んじられている」という図式が、話をしっかり伺うことで、「話を聞いてくれた⇒自分の気持ちをわかってくれた⇒解決してくれないのは、自分が軽んじられているからではないのだ」と、電話をかけてきてくださった方が思えたからなのだと思います。
では、「真摯に話を聞く」とは、どういうことでしょうか。ポイントは、あいづち、繰り返し、質問だと思います。
あいづち
一つずつ説明します。まず、あいづち。これがなかなか曲者で、あいづちを打っているつもりで、頷いているだけの方を見かけます。お、惜しい! 電話だと、なかなか頷いている雰囲気が相手に伝わりません。結果、「おい、聞いてんのか?!」と怒鳴られ、自身は「しっかり聞いてるのに(涙)」という残念な結果になります。
また、自分のあいづちを聞いたことがありますか? たまにクセで、同じあいづちを繰り返しがちな方がいらっしゃいます。たとえば、あなたが恋人や家族に一生懸命話ているのに「はいはい」と言われたらどう感じますか? ちょっと、適当に流しているんじゃない? と思いません? 同じことが、苦情対応電話でも起こります。自身は、「え、ちゃんとあいづちも打ってるやん(涙)」となります。
「繰り返しのクセなんかないよ」というあなたも、安心するにはまだ早いのです。あいづちのバリエーション、持っていますか? 「はい」「そうですね」「ええ」「うん」「なるほど」etc (「うん」なんて、文字で見ると、失礼な感じもしますが、案外電話口では相手も自分も気にせず使っていたりします。)また、同じ「はい」でも、言い方で全然、受け取る感覚が違いますよね。バリエーションを増やすことが大切です。私は人に聞いてもらったところ、「なるほど」と言いがちだそうです。自分の声の録音を聞き返したら、恥ずかしくなるくらい、「なるほど」「なるほど」言うてました( ;∀;)
繰り返し
次のポイントが繰り返し。相手が言ったことを繰り返します。特に感情面の言葉には敏感になってください。
例)
「○○でな、〇〇でな、ほんまに腹立っとんのじゃ!」
「腹を立てていらっしゃるんですね」「○○にお怒りなんですね」
要約
また、繰り返しのバリエーションとして、相手の話を要約して、確認することがあります。個人的には、これもおすすめです。こうすることで、「話、聞いとったんちゃうんか、ボケ」と言われることが減ります。
例)
「〇〇でな、××でな、ほんで□□なんや、それで……」
「恐れ入ります。せっかくお話いただいたことを、誤って理解していると申し訳ないので、確認させていただいてもいいですか。まず、〇〇された。その後、××が起こった。その結果、□□になっている。ここまでについて、私の理解はあっていますか」
質問
最後に、「質問」です。合コンをイメージしていただきたいんですが、隣合った席の人と自己紹介をして、あ、この人いいな、と思ったとき、相手から色々聞いてくれるとうれしくないですか? 「お酒、好きなの?」とか、「休みの日は何してるの?」とか。
これって、自分に興味を持ってくれていると感じるからだと思うんですね。なので、苦情主さんにもうまく質問してあげてください。例えば、苦情の箇所についての詳細、いつ頃からか、どうして欲しいのか等です。
この質問は、攻めにも使えます。「先ほど、○○とおっしゃっていましたが、今は××とおっしゃっていますね。どちらでしょうか?」という感じです。小心者の私には、ちょっと勇気のいるテクニックですが(/ω\)
以上が、真摯に話を聞いていることを相手に伝わるように表現する方法です。
〇謝るところは謝る
私は謝るべきところは、謝っていいと思います。むしろ、謝るべきです。「言質を取られて、何か要求されたらどうする」という心配されるお気持ちもわかります。
しかし、話を聞いていて、明らかにこちらに非がある場合も、やはりあるんです。あるいは、手続き的にミスはなくても、誤解を与えてしまったこと、気分を害するような対応となってしまったことがあれば、それを謝るのはいいと思います。
もし、その謝罪を元に、不当な要求をされたら、それは断ればよいと思います。
例)
手続きについて、「○○○」とご説明させていただきました。(事実)それいついて△△さんは××と感じられたのですね。(相手の感情についての理解)誤解をさせてしまうような説明となり、申し訳ございませんでした。(謝罪)
〇自分の中で、お助けフレーズを決めておく。
新採の頃、苦情電話にすぐにパニックになりました。特に、わからないことを聞かれたときなど、頭真っ白です。すぐに答えなければとパニックになり、余計に訳のわからないことを口走って、問題をこじらせました。
私と同じような経験のある皆さんに、私のお助けフレーズを紹介します。
・(質問されたが、答えられない!)→確認して、折り返しお電話させていただきます。
・「そんなこともわからんのか!」→「不勉強で申し訳ございません。お恥ずかしい限りです。」(電話主の方がよく知っていることなら)「もしよろしければ、後学のために教えていただけませんでしょうか」
・「知事(市長)を出せ!」
→「お話は担当の私が伺います。お話いただいた内容については、私から上司に伝えます。」「知事(市長)に上げるべきかについては、お話を伺ってから上司と相談して決めます」「上にお話しいただいても、結論は変わりません」
参考までに、ここに掲載したものを含めて、私のお助けフレーズ集を1枚にまとめたものを置いておきます。煮るなり焼くなり、個人の利用の範囲でしたら、ご自由に活用ください。でも、ネットでの無断転載はガラスのハートがブロークンするので、やめてください。
〇メモを残す
だいたいでもいいので、気づいた時点で何時何分頃にかかってきた電話かを書き残しておく。相手からの話のメモも当然残す。電話が終了したら、終了時間も記録。中には異常な長時間、執拗に電話をかけてくる人もいる。その際、そのメモが今後の対応を決めるにあたっての根拠になる。
〇一人で抱え込まない
まず、電話をおいたら電話中に書いた殴り書きのメモを持って、上司に報告に行きます。上司も気にしてくれてはいても、内容まではわからず、心配していたりします。「苦情のお電話がありましたので、概要の報告です。詳細はこの後まとめますが、また電話があるかもしれないので、いったん状況をご報告させてください」という感じです。その際、電話主が満足したのか、ボールをどちらが持っているのか(こちらが何か調べたり、折り返しお電話したりが必要か)、一人で対応できそうか、あるいは助けが必要かも併せて報告しておくと、上司としても指示がしやすいです。
報告が終わったら、概要→詳細を書き起こし、全体に共有します。概要だけでもいったん全体に共有し、その後、詳細を共有という形でもいいかもしれません。なぜなら、詳細をまとめている間に、また電話がかかってきたり、その電話を他の誰かが出てしまったりする可能性があるからです。また、忘れた頃にまたお電話がある可能性もあるので、記録は必ず残します。全体に共有する際は、上司も宛先に入れておきましょう。「聞いていなかった」と逃げさせないことも自分を守るためには大事です。(優秀な上司ならそんなこと言わないと思いますが(-.-))
とにかく証拠を残して、周りを巻き込んでください。これを一人で抱え込むとめちゃくちゃしんどいです。
また、電話の最中でも、もうどうしてもだめだと思ったら、いったん「少々お待ちください」と電話を保留にして、先輩に助けを求めるのもありです。上を絶対に出してはいけないということではなく、効果的に使うべし、ということなのです。(でも、上を出すのは切り札です。担当が言う言葉と、上が言う言葉では、重みがちがうのです。影響は大きいです。)
〇電話を切ってもいいし、反論してもいい
苦情対応というと、ひたすら相手にあいづちを打ち、言われるままに頷き、謝ることだというイメージがありませんか? しかし、覚えておいていただきたいのは、電話を切るという選択肢もあるということです。特に、怒鳴り散らされて、まったくお話を聞いていただけない場合や、丁寧に何度も何度も説明したのに永遠と同じ話をされる場合などです。
私は電話を切ることをだめなことだと思っていたがために、ずいぶん苦しみました。耳から頭が痛くなるくらい、何時間も苦情を聞き続けたこともあります。
丁寧にお断りした上で、いったんお電話を置かせていただくのはアリです。相手方もいったん電話が切れることで、冷静になることもあります。(怒ってすぐかけなおしていらっしゃる方もいますが)
また、心ない暴言を吐かれることもあります。公務員になら何を言ってもいいと思っていらっしゃる方が、悲しいことですが、少なからずいらっしゃいます。そのようなときは、素直に悲しいということを言っていいと思います。相手の言葉を繰り返すのもありです。たとえば、極端な例かもしれませんが、「死ねボケ」なんて言われたら、「○○さんは、私に死んで欲しいとお考えですか。そのようなことを言われると、悲しいです。私も傷つきます」という具合です。相手の言葉を繰り返すと、はっとされる方も中にはいらっしゃいます。「いや、そこまでは言ってない」としどろもどろになる方も。
〇人格を否定する言葉を受け入れなくていい
最後に、最も大切な話を書きます。怒鳴られ続けていると、あるいはあれがだめだ、これがだめだと言われ続けていると、自分自身がだめな人間な気がしてきます。
「すべて私が悪くて、私さえいなければこの人は満足しはるのかなぁ?」「こんな人間が公務員でごめんなさい」「私は給料泥棒です」「私はなんて無能なんだろう」「周りの人たちはちゃんとできているのに、私だけできていないのは私がだめな人間やからやわ」みたいな気持ちになったりします。
でも、そんなときこそ、「ちょっと待って、それって本当?」って立ち止まって欲しいのです。
行動をとがめられることはあってもいいと思うのです。でも人格を否定する言葉を受け入れる必要はないのです。
たとえば、苦情の電話への折り返しが遅れた。「なんでこんな遅いねん?!」と怒鳴られる。反省すべきは、折り返しの電話が遅かったという自分の「行動」です。行動は変えればいいんです。でも、「折り返しの電話さえも満足にできない私は、なんてだめな人間なんだろう」と考え始めたら、答えがでなくなるんです。だって、自分を変えるって大変じゃないですか。
ただでさえ、落ち込んでいるときに、自分責めを始めたら、いいことなど何もありません。あなたが変えるべきは【行動】。あなたという【存在】をだめだと否定しないでください。
苦情主からの暴言は、残念ながら止めることはできないかもしれません。でも、その暴言を、まるまる飲み込まないでください。たとえ自分に落ち度があったとしても、責められるべきは行動のみ。あなたの存在を否定する言葉は、受け入れる必要などないのです。
これは練習です。すぐにできるようにならなくていいんです。すぐできるなら練習は不要ですから。私もいまだに練習中です。一緒にがんばりましょう。
<苦情の電話で必要以上に落ち込まなくなるための5ステップ>
Step1 苦情の電話を受けて、苦情主の暴言が忘れられなくなる。
Step2 思考が自分責めの無限ループに入る。
Step3 「苦情主の言葉、本当に全部、受け入れないといけない言葉かなぁ?」と考えてみる。
Step4 暴言の対象が「行動」(たとえば○○してくれなかったこと、等)なのか「存在」(あなたという人格を否定するような言葉)なのかを分ける。
Step5 行動なら、改めるべきかを考える。
存在なら、その言葉を真面目に受け止めなくていい!
以上、私が体当たりしながら学んできた本音の苦情対応術です。これが正解というわけではありません。もしかしたら、住民さんの目線で見れば「なんとけしからん!」という話もあったかもしれません。ですが、この記事を読んで、今、苦情対応で苦しんでいる公務員の仲間が、少しでも心がラクになればいいなと思います。
最後に、塩尻市の山田崇さんに教えていただいた言葉を紹介します。殴り書きのメモからなので正確性が欠けるのはご容赦ください。ジョアンナ・メイシーさんの悲しみのワークで出てくるそうです。
悲しみは愛があるから生まれる。
怒りは正義があるから。
恐れは勇気。新しいところに向かっているから生じる。
無力感は新しい可能性。
ジョアンナ・メイシー
「なぜその言葉が出てくるの?」と考えたとき、少しだけ、優しい気持ちになれる気がしませんか?