固定資産税課税というお仕事vol.2 | 隣の公務員

固定資産税課税というお仕事vol.2

京都府長岡京市のKIYOです。前回は固定資産税課税の全体像をお示しして、「正しい課税」とは以下のようなことだと説明しました。

・正しい者を納税義務者とすること
・正しい金額で課税すること
・正しい時期に、正しい方法で納税義務者に納税の告知を行うこと

Vol.1はコチラ→https://comuin.com/2019/10/27/post-501/

そして、当たり前すぎて簡単なお仕事のようにも見えますが、そんなに甘くはないとも書きました。「正しい」というのは言うまでもなく法令に則っているということなのですが、これがなかなか難しいのです。

◆たとえば?

NPO法人が一般市民の方から土地を借りて、その上に建物を自前で建てて、短期入所事業所を開設しました。この土地と建物に固定資産税は課税できるでしょうか?

この場合、地方税法、地方税法施行令、地方税法施行規則、社会福祉法を行ったり来たりしながら読み解いていく必要があります(ここでは長くなり過ぎるので詳細は割愛しますが、実はこの条件だけでは課税か非課税かは判断できません)。また、場合によっては市(町・村)税条例、市(町・村)税条例施行令、市(町・村)税条例施行規則を当たる必要もあります。

◆だからこそ鍛えられる

とにかく困ったら地方税法や税条例、そして「実務提要」と呼ばれる解説書などを徹底的に読み込みます。場合によっては判例を読んで解釈したりもします。そして、税に関する法令のみならず、他分野の法律や制度(都市計画法、建築基準法、農地制度、生産緑地制度、社会福祉法…)を理解する必要も出てきます。

課税業務はある意味で市民さんの財布に手を突っ込むようなお仕事ですので、法令に基づいての業務執行に妥協は許されません。その意味で、法令を読み、運用する力は、どの部署よりも鍛えられるように思います。

また、専門性が高く複雑な内容を取り扱う業務である一方で、市民さんからのお問い合わせに対しては分かりやすく説明することも求められます。そのような意味で、説明力が鍛えられる場面も多いです。

◆資産税課税業務はツラいよ…

固定資産税は多くの自治体で基幹財源となっています(ご自身の自治体の歳入総額と、その中での市税収入、固定資産税収入額をチェックしてみてください!)。私の自治体もそうですから、自身の自治体の屋台骨を支えているという自負というかやりがいはあります。また、法令運用能力や説明能力が鍛えられるという実感も得られます。

しかし、ツラいこともあります。前に書いた「ちょっとしたミスが取り返しのつかないことにつながるというプレッシャー」は、なかなか理解してもらえません。基本的には異動(変化)があった土地や家屋のみが課税(評価)見直し対象となるので、一度誤ってしまうと、そのまま半永久的に誤りが引き継がれてしまうという怖さがあります。(ですので、紹介した事例のように誤りが27年間気付かれないということ起こりえるのです。)

また、基本的には市民さんからありがとうと言われる業務ではなく、誤ると大目玉を食らうという業務特性もツラいところです。(とは言え、真摯な態度で懇切丁寧な対応をすることで、感謝されることはありますが。)

それでは次回から、いよいよ「正しい課税」についてのあれこれをお話ししていきたいと思います。

この記事を書いた人:KIYO
KIYO

「キヨさん」こと京都府長岡京市の清原と申します。システムエンジニア5年と人材育成5年の後に公務員に転職。好物は美味しいものとおもしろいこと。 行動原理は「10年間のハンデを埋めたい」という思いと「タコツボ化してはいけないなぁ」という思いと…。

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