固定資産税課税というお仕事vol.9 | 隣の公務員

固定資産税課税というお仕事vol.9

今回は、当たり前すぎて触れていなかった都市計画税のお話と、実はとっても大事な守秘義務と情報開示の話です。

◆都市計画税のお話

多くの自治体では、固定資産税と合わせて都市計画税を課税、徴収しています。都市計画税は都市計画法や土地区画整理法に基づいて行う事業に要する費用に充てるために課すことができる市町村税です(法702条)。特定の経費に充てる目的で徴収される税のことを目的税と呼びますが、目的税である以上は、使途の明確化が求められるところです。

都市計画税の賦課徴収は、基本的に固定資産税の賦課徴収の例により、固定資産税の賦課徴収とあわせて行います(法702条の8)。主な違いは以下のとおりです。

(項目)固定資産税都市計画税
税の性質普通税目的税
課税客体土地・家屋・償却資産
土地・家屋(法702条)
(原則、市街化区域内のみ)
税率
※条例で定める
標準税率1.4%
制限税率0.3%(法702条の4)
=上限が0.3%
土地課税標準算出時の
住宅用地特例率(※)
原則1/6
原則1/3
(※)Vol.6参照→https://comuin.com/2021/03/09/post-1489/

◆守秘義務のお話

地方公務員には地方公務員法34条で守秘義務が課されています。加えて、地方税法22条にも守秘義務が定められており、地方公務員法よりも重い罰則が予定されています。これは税務職員は調査権が行使できるなど、一般の公務員に比べて私人の秘密を知ることができる機会が多数あることによるものと考えられます。いずれにしても、税務職員はこの守秘義務を強く意識しておく必要があります。

◆情報開示のお話~その1.証明書の発行~

一方で、守秘義務が解除され、逆に情報開示しなければならない場面があります。まず分かりやすいのが、いわゆる評価証明の発行です(法382条の3)。もちろん、納税義務者本人からの請求があれば発行しなければならないのですが、気を付けなければならないのは第三者からの請求があった場合です。詳細は地方税法施行令第52条の15に規定されています。特に注意すべきはその第4項に規定されているもので、ざっくり言うと民事訴訟のために弁護士等が請求する場合で、この時だけは課税標準額は出してはいけません。

ちなみに、「税相当額」も記載している公課証明を発行されている自治体も少なくないと思いますが、実は法的根拠はどこにもありません。

情報開示のお話~その2.名寄帳の閲覧

もう一つ発行するものとして名寄帳があります。根拠法令は法387条ということになりますが、条文をよく読むと、「固定資産課税台帳の閲覧に供しなければならない場合(法382条の2)、固定資産課税台帳の代わりに名寄帳を閲覧に供することでよい」という形になっています。実務上、あまり強く意識する部分ではないと思いますが、念のため説明しておきました。ちなみに、名寄帳は閲覧の対象ですが、名寄帳を発行する場合については手数料をとる自治体ととらない自治体があるようです。

◆情報開示のお話~その3.縦覧~

(名寄帳の閲覧とは別に)縦覧制度というものがあります(法416条)。ざっくり言うと、納税者が自身の所有する土地や家屋の評価が妥当かどうかを見るために、市町村内の他の土地や家屋の評価額を見ることができるという制度です。この制度趣旨はとても重要です。

ポイントその1は縦覧期間です。縦覧開始は毎年4月1日、終了は4月20日または第1期納期限の遅い日以降の日です。年度替わりの初日からが縦覧期間なので、バタバタしますが忘れないようにしましょう。

そしてポイントその2は、開示内容です。本人以外の情報を開示するという極めて珍しい制度ですので、開示内容は制度趣旨に沿って必要最低限の情報であることに十分注意が必要です。縦覧制度は縦覧帳簿を見せることを意味しますが、縦覧帳簿の記載事項は法415条に定められています。最も大事なことは、評価額は開示対象であるのに対して課税標準額は開示対象外である点です。制度趣旨から考えると、当然ですね。

◆終わらなかった…

今回こそ最終回と思って書き始めたのですが、思いの外、長くなってしまいました。次回こそ最終回。最後に、理解を深めるための次のステップについてお話ししたいと思います。(つづく)

この記事を書いた人:KIYO
KIYO

「キヨさん」こと京都府長岡京市の清原と申します。システムエンジニア5年と人材育成5年の後に公務員に転職。好物は美味しいものとおもしろいこと。 行動原理は「10年間のハンデを埋めたい」という思いと「タコツボ化してはいけないなぁ」という思いと…。

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