《自称「普通の公務員」によるメディア》
そんなふうに名乗り、公務員志望者や現役公務員に特化した情報を発信しているメディアがあります。
それが「隣の公務員」。
しかも、ライターも皆さん現役の公務員。実は、私もこのたびこの「隣の公務員」にライターとして参加させていただくことになりました。
そこで「編集長! ちょっとお話聴かせてください!」と初仕事(ボランティアだけど)としてインタビューさせていただくことにしました。
※本記事は、ライターのnote「島田正樹|公務員ポートフォリオワーカー」との同時掲載記事となります。
《インタビュイー》
橋本貴子(はしもと・たかこ)
1989年生。大阪生まれ大阪育ち。
大阪府入職後、土木事務所、医療対策課、市町村課を経て2021年4月からスマートシティ戦略部戦略企画課でスマートシティを担当。
Webメディア隣の公務員 編集長
国家資格キャリアコンサルタント
>>前編はこちら「仕事辞典をつくりたい――「隣の公務員」編集長 橋本貴子さん(前編)
「やりたい!」を叶える実験場
―― 橋本さんにとって「隣の公務員」ってどういう存在ですか。
橋本さん:うーん、遊び場。実験場ですかね。
―― 実験場?
橋本さん:はい。私が「やりたい!」と思ったことは、全部、「隣の公務員」ならできてしまうので。職場だと上司の決裁を得なければできないことでも、「隣の公務員」では自分の意思と判断でできるのがいいですね。そういうところは「隣の公務員」をやっていてよかったなと思います。
―― 「隣の公務員」でご自身の「やりたい!」を実現されているんですね。今後どんなメディアにしていきたいですか。
橋本さん:元々は記事で情報発信するのと同時に、中にコミュニティもつくりたいと思っていました。ただ、それはオンライン市役所というコミュニティがつくられたことで、そちらにお任せしようかなと思っています。
―― コミュニティづくりの構想もあったんですね。
橋本さん:そうですね。そこは役割分担できたらいいなと考えています。オンライン市役所はコミュニティであり情報という観点では「フロー」ですが、隣の公務員は「ストック」として必要な情報を整理してお届けできるようにしたいですね。
―― ストック?
橋本さん:例えば、最近だとnoteで仕事のことなどを書く公務員の人も出てきていますが、検索性はあまり高くありません。必要な情報にすぐにアクセスできるわけではないんですね。
SNSでの発信も同様です。そこは隣の公務員として、きちんと関連する情報同士もつなげたりして、必要な情報にアクセスできるように整えたいです。
―― なるほど。そのために編集長として、どんな記事を制作していきたいとお考えですか。
橋本さん:そうですね、コンテンツという点では業務効率化に役立つツールとかも提供していけたらなと思っています。私は子どもの頃から「どうして女性ばかり大変なんだろう?」「どうして女性だけが家事も育児もしなくちゃいけないんだろう?」って、思ってきました。
でも、実際に結婚して、子どもを産んで、男の人も、本当は家庭に関わりたいのに仕事が終わらなくて、関われないとか、色々な葛藤があるんだなというのが見えてきたんです。
だから、女の人ばっかり大変、という状態を抜け出すには、夫婦共々、業務を効率化して、仕事を早く終わらせることが大事なんだなと思って。だから、素人作ですがマクロとか共有するのもいいかなとか。
あと、自主研(職員による自主的な研修・勉強会等※筆者注)の情報ってなかなか表に出てこないので、ぜひ隣の公務員で整理してお届けしたいです。ライターの皆さんに地元の魅力を伝えるような記事もお願いしたいです。
地方公務員や地方公務員を目指す人たちのための総合ポータルサイトにするのが目標です!
―― ご自身がライターとして書いてみたい記事などはありますか。
橋本さん:ライターとしては、がんばりすぎなワーママさんたちに「がんばりすぎなくてもいいんだ」って思ってもらえるような記事も書いていきたいです!
家事の効率化とか、そもそも完璧主義を手放すとか、そういう話です。イライラしながら、一人で完璧を目指すより、毎日ご機嫌でいられたらいいなと思っています。
「がんばってるのに、幸せじゃない」
―― ワーママという言葉が出ましたが、橋本さんご自身も「ワーママ」でありながら、キャリアコンサルタントとしても活動されていますよね。
橋本さん:はい。
―― どういう経緯でキャリアコンサルタントになられたのですか。
橋本さん:私、ずっとキャリア迷子なんです。だから私自身のために、この資格を勉強しようと思ったのが最初です。
―― キャリア迷子?
橋本さん:はい。実は学生時代には医学部を目指したり、先ほどもお話ししましたが会計士を目指したりしていました。それって私が元々自己肯定感が低くて、それを補いたくて難しい資格がほしくなっていたんだって気付いたんです。
キャリアコンサルタントの養成講座の中でアルバート・エリスの心理療法というのを勉強するんですけど、そこに出てくるイラショナルビリーフ、ゆがんだ認知というのを学んでいるときに「私、これだー!」って。
―― 「これだー!」と気付いたんですね。
橋本さん:はい、そうですね。元が歪んでるので、解決策も歪んじゃって、がんばってるのに、幸せじゃない、みたいな状況に陥ってたんです。
―― がんばってるのに、幸せじゃない?
橋本さん:私には、何の価値もないから、がんばって認めてもらわなきゃいけない。がんばり続けなければいけない、という思い込みですかね。
資格を取る前は、この資格をとれば、みんなにすごいと思ってもらえるかも、そしたら自分を認められるかもと思うんです。
でも、資格がとれても、うれしいのは一瞬で、これは簡単な資格だから、と思い始めるんです。もっと難しい資格をとらねばと。
その調子で資格の難易度を上げていったら、必ず行き詰まるんですよ。そんなに頭がよい方ではないので。
で、確認する。なんてだめな自分なんだろうと。何事も中途半端で、何一つ成し遂げられない。やっぱり私はだめなんだって。その繰り返し。
―― 今はもう「その繰り返し」からご自身を解放できたのですか?
橋本さん:完全にはまだですね。まだ迷います。勉強しようかな、とか、好きなことをしていると落ち着かない、許されないことをしている気持ちになるとか。実際、教材を買い集めてしまいがちです。
一時は、わかっているのに、無駄な勉強に挑もうとしては挫折する自分が、余計にいやになりました。なぜ、理解しているのにやってしまうの? とか、自己肯定感が低いことが原因だから、なおさなければならない、とか。
でも、今はそうしてしまう自分、自己肯定感が低くて、そこから変わりたいと思っている自分を含めて、仕方ないなぁ、やりたいようにやったらいいよと思うようになりました。
ようやく、自己受容ができてきたのかもしれないですね。
―― 自己受容ができてきたきっかけは何だったのですか?
橋本さん:自己受容ができるようになってきたきっかけはいくつかありますが、キャリアコンサルタントとしての学びは、その大きな要因だと思います。
座学はもちろん、クライアントとの面談でも、たくさんの学びがあります。
キャリコンとして時に自分と似た人の、時に自分とは正反対の、憧れるような人の話を聞くこともあるんです。自分と似た人の話を聞くことで、ある意味、自分を客観視できるようになります。
自分とは正反対の人の話をきくことで、自分が憧れる性質をもった人でも、その性質ゆえに苦しんでいることもあるのだなと知ることができました。もちろん、面談はクライアントの問題解決が主眼なんですが、思いがけず内省につながるヒントがもらえることも多いです。
「毎日ゴキゲンで過ごす人が増えたらいいな」
―― キャリアコンサルタントとしては、どんな活動をされているのですか。
橋本さん:時短勤務が終わりフルタイム勤務になってから、具体的な活動から遠ざかっているのですが、資格取得後、時短勤務の期間には公務員志望の学生さんなどを相手に、毎月10人くらい面談してキャリアカウンセリングを行っていました。
アプリでマッチングするんですけど、依頼があると全部応えたくなるんですよね。今でも依頼があるのですが、フルタイム勤務になってからは対応できていなくて。でも、そろそろ再開してもいいかなと思っています。月に何人って上限を決めたりして。
―― キャリアコンサルタントと「隣の公務員」は、橋本さんの中ではどのようにつながっているのでしょうか。
橋本さん:私の中では「隣の公務員」とキャリアコンサルタントって、すごく強く結びついているんです。
「隣の公務員」の仕事辞典は、読み手の「職業理解」の支援ですし、ライターさんたちには記事を書くことをつうじて「自己理解」を深めてもらうきっかけになるといいなと思っています。
さらに、色々なライターさんの仕事の工夫や業務内容をシェアしてもらうことで、業務を効率化させたり、深めてもらうことができる。そしたら、仕事がやりやすくなるし、面白くなる。仕事が効率化すれば、家庭の時間も増えて、心に余裕ができる。
キャリアに行き詰まったときも、色々な人の経験や学びを参考にすることができる。そんな世界を隣の公務員で作れたらいいなと思っています。私にとって、隣の公務員は、ある意味、キャリアコンサルタントとしての活動の一部なんです。
―― 最後に、読者の方へのメッセージをお願いいたします。
橋本さん:結局、私がやりたい事って、「仕事をつうじて幸せになる」みたいな大げさなことではなくて、「毎日ゴキゲンで過ごしたい」「毎日ゴキゲンで過ごす人が増えたらいいな」っていうことなんですよね。
それを実現する手段がキャリコンや隣の公務員なんです。私みたいな普通の公務員でも、動き出したらいろんな人に出会って、こんな風にやりたいことをやって楽しく過ごせているので、ぜひ、読者の皆さんも、やってみたいことがあったら、チャレンジしてみてください。
あ、やりたいことがわからないという方は、隣の公務員のライター登録とか、どうでしょう?(笑)
―― 「毎日ゴキゲンで過ごす人が増えたらいいな」って、とても共感します。橋本編集長、今日はお忙しいところ、ありがとうございました。
【編集後記】
強い使命感やすごい熱量――Webメディアを立ち上げた「編集長」に対するイメージとは異なり、橋本さんは、熱っぽく力説するわけでもなく、終始とても柔らかく自然体で語っていたのが印象的でした。
一方で、公務員の「職業理解」「自己理解」という観点で「隣の公務員」というメディアの意義を語るお顔からは、キャリアコンサルタントとしての専門性と想いも垣間見えました。
「普通の」公務員によるwebメディア『隣の公務員』が、これから公務員一人ひとりの「ゴキゲンな毎日」を実現するプラットフォームへ成長していく過程を楽しみながら、私も一人のライターとして、記事を書くことで後押ししていきたいと思います。(島田正樹)
※この記事を執筆したライター島田正樹のnote「島田正樹|公務員ポートフォリオワーカー」でもこの記事を掲載しています。