公務員女子限定のFacebookグループの「もやもや公務員女子部(もやじょ部)」による、憧れの女性管理職へのグループインタビューです。前回の諫早市の村川美詠さんに続き、今回はさいたま市役所の柳田香さんです。
■柳田香さんのプロフィール
さいたま市行政改革推進部行政改革・公民連携担当副参事
87年に大宮市(現さいたま市)に入庁。91年に結婚し、翌年、三つ子を出産。育児と両立しながら、人材育成課、行政改革推進本部へ。「一職員一改善提案制度」を導入し、13年には全国都市改善改革実践事例発表会「かいぜんまっちin saitama」を担当。また、17年の「第8回世界盆栽大会inさいたま」も担当として全力を傾けた。庁内の女性職員24人による「おもてなしきものクラブ」で活動中。NPO法人自治体改善マネジメント研究会理事。
-管理職経験はどのくらいですか。
今の部署が2か所目で、5年目になります。
-管理職になって良かったことはありますか。
さいたま市は13000人くらい職員がいます。人との繋がりがすごく大事なので、ネットワークが広がってよかったです。
-人との繋がりができるのはどんな時ですか。課長同士の会議があるのですか。
課長会議はありません。相手の席へ行って話をして顔見知りになります。そうすると、本音で話せる関係ができて、話が進みやすくなるんですよね。
-私は自分で事業をやることが楽しく、「管理職だからやりたいことができる」という柳田さんがおっしゃる管理職の楽しさがぴんときません。
管理職は自分が事業をやるわけではないのですが、チームとしてあるべき方向性にみんなでやりましょうよとマネジメントできます。そういう意味でやりたいことが実現できますよね。
-課長だけがやる気で、部下の人たちがやりたくないということもありますか。
部下とは「その部分は必要ないよね。こういうことだったら必要なんじゃないか。」と、組織で必要かどうかを日々話をしながら、落とし所を見つけています。みんなで話し合えるような雰囲気作りが大切です。日々の声かけは所属長の役割ですから。楽しい事業で前に進めるべきものだったら、所属長が後押しすればなんとかなります。若い職員は成功体験が自信になるので、どんどん進めたいなって思います。
-いつから管理職を意識しましたか。
最初は意識していませんでした。課長補佐になったころから、課長を見ながら私が課長になったらどういう動きをするのかなと考えるようになりました。管理職にならなくてもいいかなと思っていました。
-管理職になるために準備したことはありますか。
特にありません。以前、自治会や商店街の飲み会に出席した時に、「行政の人たちって自分で壁を作るよね」と言われたことがあってから、自治会の清掃活動とか、外に出るようにしました。役所の中で女性だけの着物でのおもてなしのグループを作って、外と交流もしています。
-昇進や登用はどのような仕組みですか。
係長試験が2年前から始まりました。課長の試験はありません。係長の上は課長補佐になります。
-係長試験を受けようと思われたタイミングやマインドを教えて下さい。
私のときは係長試験がなくて、主任試験でした。主任試験はなんとなくみんなが受けていたので流れで受けていました。係長、課長補佐まではその流れできちゃいましたね。
-管理職として心がけていることはありますか。
今年の4月にメンバー5人のうち半分、人が変わっちゃったんですよ。年度初めに面談をして、家庭や子供の事情などを差し支えのない範囲で教えてもらいました。子供が小さいから残業できないとか、管理職に言いづらいことはこちらから聞くようにしています。今は立ち入ったことを聞くのはどうなの?という考えもありますが、配慮すべきところは配慮したほうがいいと考えています。
-男性の部下の対応で気をつけていることはありますか。
私のところも、20代、30代、40代の男性です。よく話を聞いてあげたほうがいいですね。3人とも性格が全然違います。どういうふうに言ったほうがいいのか、考えてもらう時間が一定の期間があったほうがいいのか、焦らずに話をよく聞いたほうがいいですよね。「今、進捗どう?」とか、1日1回でも声かけるようにすると、なんとなく対応の仕方とか、微妙な距離感がわかります。そんなふうに一人ひとり対応しています。
-個人の発揮できる能力や時間の使い方に差がある中、それぞれの部下のモチベーションをどのように管理していますか。
もちろん一人ひとりの能力やモチベーションはそれぞれ違います。一人ひとりから、1週間の仕事のスケジュールを全部教えてもらっています。この人は「こんなことに悩んでいるなあ」とか、「ここまでは今週できるな」という把握をしています。
毎日午後3時に「今日の進捗はどうですか、残業しそうかな、どうかな」と声かけをしています。「こういうことに悩んでいます、課題があります」という時に、3時に分かればクリアできます。4時だと残業しないと間に合いませんから、3時に声かけしています。
職場では自分の家族のことや子どものことを一切話さないようにしています。子どもが欲しい人や、「私も忙しいのに」と思っている人もいますから。あとは楽しく雑談しています。
-コロナウィルスの対応で、面と向かいあって雑談するのが難しくなっています。どのような方法で部下とのコミュニケーションをとっていますか。
今は5人中2人ほどしか職場に来ていません。休暇かテレワークで対応して、顔をあわせないようにしています。コミュニケーションのため、業務日誌をエクセルで作成し、今日はどんな問い合わせがあったのかなどを共有しています。緊急の場合はLINEや電話で対応しています。今はステイホームで職場に来ないでとなっていますので、雑談はできませんけど。
-マネジメントでうまくいかなかったご経験はありますか。
今もうまくいかないことは多々あります。同じ職場のメンバーに思いだとか、いつまでにこれをしようという認識を共有しないとずれていきます。常にメンバーと話し合って、コミュニケーションを多くとるようにしています。それでも、伝え方が違ったり、日本人特有の「たぶんとか、相手はこうするだろう」みたいな感じで、うまく伝わらなかったりすることもあります。やっぱり、伝えることは大事ですね。
-メンバーによって、考え方の違いや温度差があったりしますよね。
あわせていくのにすごく時間がかかる人と、言えばパッとわかる人がいます。「いつまでに、これをやる」というステップを決めておかないとズレが生じてきます。
-管理職になって変わったことはありますか。
決裁文書など細かいものも、全て目を通すようになりました。管理職になるまでは、忙しい時は雑になっていましたけど。全てが自分の責任になるので、隅々までみるようになりましたね。
-いつも身なりをきちんとされている柳田さんですが、モチベーションを教えてください。
子供が小さい時は、夫と家事の分担をしっかりして、自分の時間を作らせてもらいました。子どもが3人いるので、子育てで疲れていると絶対に言われたくないので、外にいる時はしっかりしようと思っていました。管理職でもあり、今は民間の方と仕事をしています。いつどなたがいらっしゃるか分かりません。出かける時はラフですが、外に行くときは上着をもって行くとか、議会の時はスーツ着るとかして、さっと準備ができるようにしています。
職場の外に仲間を作って、「そう言う考え方もあるよねえ」と気づく機会をつくり、外に出ることで自分のモチベーションを保っています。
-三つ子ってすごいですね。
実家と2世帯で住んでいますし、夫の両親も近かったので。まさに総力戦でした。
-当時、育休制度はありましたか。
そのときは1年だけありました。育休の制度はないので、0歳児で復職するしか選択肢がなかったです。
-育児のノウハウが仕事に活きるようなことがありましたか。
2か月前に孫が生まれました。孫が生まれて、自分の育児がどうだったかなと思い返しています。子どもと向き合う時間を増やすために、それ以外の時間のスケジュールをしっかり組みました。例えば、土曜日に買い物をして一週間分の食事を作って、子供と向き合う時間を増やしました。子供の笑顔を見ると嫌なことがふっとぶじゃないですか。そうすると新たなことにチャレンジしようと思えましたね。子供を抱っこすると次の日もがんばるぞとも。子供は嘘つかないので子供と触れ合う中で、相手の気持ちもわかるようになるかあって、当時は考えていました。
-柳田さんは官民連携の部署でお仕事されていますよね。民間の方が市民ニーズの捉え方は上手だったりします。こちらが決裁を回していると、民間の方からは遅いと思わることもあります。役所のルールと民間の方とのすり合わせする際のポイントを教えてください。
今の職場では、民間の方と多く仕事をしています。顔を合わせてとことん話をして、ニーズを合わせることが大切です。お互いに「やりましょう」となった時に、相手の方は「早くやりましょう」ということになります。民間の方はこちらの1か月を1週間でやりたい、ということがままあります。意思決定の上、議論をし、それを紙やデータで見える化します。相手からすると予算や上司とかそういったものは関係ありません。こちらが思っているタイミングは行政側の都合なので、相手の思っているタイミングに合わせることが大事です。
-私たち、もやじょ部のメンバーにメッセージをお願いします。
1992年に3つ子が生まれ、周りから「なんで仕事やめないの?」と言われたりしました。職場と家での気持ちの切り替えとか、感情のコントロールをちゃんとしようとずっと続けてきました。明日に伸ばさず、今日できることは今日やるようにしています。明日やれる保障はどこにもないですから。