熱い。熱すぎて、心臓がバクバクしていた。熱に浮かされているみたい。脳みそを、強すぎる力で、ブンブンブンッってシェイクされた感じ。だからしばらく、文章に書き起こすのに時間を置かないといけなかった。
ちゃんと自分の「ど真ん中」を生きているか?
そう問われているような気がして。
2020年8月1日。年に数回の公務員のお祭り、よんなな会が開催された。国家公務員と47都道府県の地方公務員が集まって、講演を聞いたり、仲間集めをしたり、交流をしたりする会だ。
いずれも素晴らしい講演だったのだけれど、中でも一番突き刺さったのが、安彦考真さん(https://twitter.com/abiko_juku?s=09)の話だった。
正直、よんなな会で講演を聞くまで、安彦さんのことは全然知らなかった。年棒120円Jリーガーとして、激レアさんを連れてきたのテレビ番組に出演した方だそうだ。私は運動が苦手なので、自らやる習慣もなければ、人がやっていることを見る習慣もない。だから、どうしてJリーガーの人が、今回スピーカーに選ばれたんだろうと不思議に思っていた。
それがまさか、一番、自分にガンガン響く言葉を届けてくれる人になるとは!
ここから、1歳の息子の乱入に耐えつつ書き留めた安彦さんの言葉をお届けしたい。
(書き手による妄想補完が入っている可能性がありますので、ご留意ください)
夢の後悔を取り戻しにいく
子どもたちが夢を語るのって、なんでだと思います?
子どもたちが夢を語るのは、きっと周りが夢を語るからなんですよ。環境が夢を育てる。
けれど、大人になるにつれて、夢を語ることがなくなりますよね。夢を語るのは恥ずかしいことになっていく。
僕が40歳を過ぎてJリーガーになるという夢を語ったとき、周りは嫌悪感を露わにしました。びっくりするくらい人が離れていったんですよ。
それなりに仕事もして、お金ももらっていました。でも、それを全部捨てることを決めたんです。
ぶら下げられたニンジンで人生を走ることをやめようと決めました。お金を目的にしない。
自分の意思で歩き、自分の意思と行動が、僕の足跡として僕の人生になる。
そんな風に生きたいのです。
そうすれば僕の人生は、誰かの道しるべになることができると思うのです。
なぜ、そんな風に考えるようになったのか? きっかけは、一人の生徒でした。
10回の素振りより、1回のバッターボックス
僕は不登校の子どもたちが通うスクールで、サッカーを教える仕事をしていました。
最初は子どもたちに、自分が経験してきたことを自分の言葉で語っていました。
「10回の素振りより1回のバッターボックスだぞ」
そう、生徒たちに語っていたんです。
それなのに、いつのまにか、本で学んだ受け売りの知識を子どもたちに伝えるようになっていたんです。
それに気づいたのは、生徒が読みたい本を買えるように、クラウドファンディングに挑戦してみた、と聞かされたときです。
僕も知識としては、クラウドファンディングを知っていた。でも、知っていただけだった。挑戦しなかったんです。知識だけで満足していました。あれほど、「1回のバッターボックスだ」なんて偉そうなことを言っていた自分がです。
恥ずかしくなりました。彼は、僕が素振りしている間に、あっさり1回のバッターボックスに立ってしまったんです。
どんな詐欺師も自分を騙せない
僕は生徒に、気づかされました。自分の情けないところに蓋をしていたんです。そのとき僕は39歳でした。愕然としました。何者にもなれていないじゃないかと。
たしかに世間的には、恵まれていたかもしれません。それなりに充実もしていた。けれども、周りからどんなに幸せそうに見えていたとしても、自分は本当のことを知っているんですよ。
自分を騙し続けて生きていくのか?
そう思ったら、いてもたってもいられなくなりました。
僕はもう一度、Jリーガーになるという夢に向き合うことを決めたのです。
クラウドファンディングをして、お金を集めて、9ヶ月くらいトレーニングしました。そして幸いなことに今のチームでJリーガーになることができたのです。
年棒120円のJリーガーに対して、周りの目は厳しいですよ。
「安彦はJリーガーじゃない」なんて批判、誹謗中傷の嵐。
でも、いいんです。僕は自分の人生のリーダーなんです。
僕の定義では、Jリーガーは人に影響を与える人なんです。「なぜかよくわからないけど、この人が出たらスタンドが沸くぞ」そんな風に思ってもらえる人になりたい。
サッカーは職業ですけど、僕の目的はサッカーを通して僕という生き方を伝えることなんです。
人生で一番輝いている瞬間は、旅の途中
人生で一番輝いている瞬間っていつだと思いますか?
ゴールを達成したとき、と思いませんか?
僕は旅の途中だと思うんですよ。
大変なこともたくさんある。だけど、ゴールに向かって、トラブルをどう回避するか考えながら一生懸命進んでいく。その瞬間こそが、輝いていると。
僕、お金はないですけれど、素振りではなく、バッターボックスに立ったという僕だけにしか語れない話ができるんですよ。だからごはんをごちそうしてもらったら、話をするんです。1000円なら2000円分。それで喜ばれます。
どうにもならないことに、いかに立ち向かうか
どうしようもないことはたくさんあります。そんなときほど、感情優位から事実優位に切り替えるんです。今、目の前にあるできることを淡々とやるんです。
よく、「悩んでいるんです」と相談を受けます。でも、よく聞くと大抵悩みじゃないんですよね。
えっ? と思われますか。
たとえば、「サッカーのためにブラジルに行くかどうか悩んでいる」というような相談です。僕はそれに対して何も力を貸してあげられない。
なぜならそれは、悩みではなく、迷いだから。
迷っている状態って、動いていないんです。行動していない。行動前。けれど、ずっとそうしていると、悩んでいる気になっちゃうんですよ。
「サッカーのためにブラジルに来たけど、○○で困っている」これなら、「じゃあ、ブラジルに知り合いの監督がいるから、連絡してみるよ」と言ってあげることができる。
悩みは、動いたからこそ発生するんです。行動後。
迷いと悩みは、似ているようで違うんです。行動前なのか、後なのか、そこには大きな差がある。
だから、最初の「スペインに行くかどうか悩んでいる」という人には、「行ってからもう一度、聞いて」と言っています。
チャレンジって、崖っぷちにいくことです。トライは答えがある。けれど、チャレンジはそうじゃない。人はコンフォートゾーンに身を置きたがるんです。
でも、崖っぷちに立ったら、変わる。
進化と変化は違うけれど、たとえ変化が進化にならなくても、変えてみなければ、進化することは絶対にないんです。
チャレンジした結果、本当に崖でしたということもあるかもしれない。けれど、チャレンジして、崖だったとわかった。その景色を見たということが重要なんです。
自分が自由にできるものなんて少ないです。唯一自由に決められるのが、自分の人生じゃないですか。
まだ起きていない未来にびびって、動けなくなるのは、もったいないですよ。不安と心配が人の成長を妨げるんです。
もちろん反対意見は言いやすいですよ。孤独とオリジナリティは唯一無二なんです。孤独を恐れなくていいんです。自分が好きならいいじゃないですか。荒野ですよ。暗いトンネル。進んでも進んでも真っ暗。でも、進み続けたら、小さな光が見えてくるんです。
15年たったら初心に戻るのって大変なんです。嘘という服を何枚も着てしまって、身動きが取りにくくなってしまいますから。やり残したことをやりきって初めて、後悔を取り戻せるんです。
大人だから難しいですか? いいえ、大人だからこそできますよ。大人は人の力を借りることができますからね!
さぁ、あなたはバッターボックスに立ちますか? それとも今日も、素振りを続けますか?